グラム陰性の桿菌で通性嫌気性菌に属し、環境中に存在する細菌(バクテリア)の主要な種の一つである。腸内細菌の一種でもあり、温血動物(鳥類、哺乳類)の下流の消化管内、特にヒトなどの場合は大腸に生息する。
大腸菌には非常に多数の株が存在する。大半の大腸菌株は無害であるが、その中には病原性を持つものも存在する。特に一部の血清型(EPEC、ETECなど)は宿主に深刻な食中毒を引き起こす可能性があり、製品のリコールを伴う食品汚染事故の原因となる場合がある。無害な菌株は、腸内の正常な微生物叢(マイクロバイオーム)の一部を構成し、ビタミンK 2を生成して血液の凝固を助けたり、腸内で病原菌のコロニー形成を防止する等、共生関係にある宿主に利益をもたらしうる。
大腸菌および他の通性嫌気性菌は腸内微生物叢の約0.1%を構成する。腸内の大腸菌は、糞便を通じて外環境に排出され、糞便から口腔への感染(糞口経路)は、細菌の病原性株が疾患を引き起こす主な経路となる。細胞は限られた時間、体外で生存することができる。排出された大腸菌は、好気性条件下で3日間、新鮮な糞便中で大量に増殖するが、その後は徐々に減少することが報告されている。大腸菌は株ごとに異なる特徴を持ち、また異なる動物の腸内には異なる株の大腸菌が生息している。そのため、糞便汚染を検出するための潜在的な指標生物として利用されている。例えば、環境水を汚染している糞便が人間から出たものか、鳥類から出たものかを推定することができる。一方で近年の研究から、宿主の外で何日も生存し増殖するような、環境的に持続的な大腸菌の存在が明らかになっている。